第7回グループE – 代謝調整ホルモン

皆さん、こんにちは。
前回は「性ホルモン」に注目し、テストステロン、エストロゲン、プロゲステロンについて解説しました。
今回は同じグループEに分類した「代謝調整ホルモン」、つまり甲状腺ホルモンを取り上げます。

甲状腺ホルモンは、首の前にある「甲状腺」という小さな臓器から分泌されるホルモンです。
体内のエネルギー代謝や体温調整に大きく関わるため、これが乱れると「太りやすくなる」「疲れが取れない」「気分が落ち込みやすい」など、全身の不調がじわじわと現れます。

甲状腺ホルモンの基礎知識

主な種類
– T4(サイロキシン)
血中に多く存在し、必要に応じて活性の高いT3に変換される。

– T3(トリヨードサイロニン)
生理活性が強く、細胞の代謝を活性化する主力ホルモン。

いずれも甲状腺で産生され、全身の細胞に働きかけてエネルギーを生み出す仕組みをサポートします。

役割
1. 基礎代謝の調節
体を動かしていないときでもエネルギーを消費し、体温を維持するために重要。

2. 成長や発達
子どもの時期には骨や脳の発達にも欠かせない。

3. 精神面への影響
甲状腺ホルモンが不足すると気分が沈みやすくなり、過剰だと落ち着きがなくなったり情緒不安定になることがあります。

甲状腺ホルモンが不足する(甲状腺機能低下症)場合

主な症状
– 疲労感、倦怠感
朝起きても体が重く、日中もエネルギーが湧かない。

– 体温が低い、寒がり
基礎代謝が低下し、体温をうまくキープできない。

– 体重増加
代謝が落ちるため、摂取カロリーが燃えにくくなる。

– むくみ、肌の乾燥、便秘
全身の代謝低下が影響しやすい。

– 気分の落ち込み、うつ状態
脳内の伝達物質にも影響を及ぼす可能性がある。

原因
– 自己免疫疾患(橋本病など)
– ヨウ素の不足や過剰摂取
– 甲状腺の外科手術や放射線治療の影響

甲状腺ホルモンが過剰になる(甲状腺機能亢進症)場合

主な症状
– 動悸、息切れ
心拍数が上がりやすく、ちょっとした動作でも苦しくなる。

– 多汗、暑がり
体温が高く感じ、少し動いただけで大量の汗をかく。

– 体重減少
食欲はあるのに代謝が過剰に高まり、痩せてしまうケースも。

– イライラ、不安感
神経が高ぶりやすく、心も落ち着かない。

– 手の震え
甲状腺機能が過剰だと手指が震えることがあります。

原因
– 自己免疫疾患(バセドウ病など)
– 甲状腺への過度な刺激(TSH受容体異常など)

甲状腺ホルモンバランスを整えるポイント

1. ヨウ素の適度な摂取
昆布やわかめなどの海藻類はヨウ素が豊富。
日本人はだし文化があるため、意外と過剰摂取になっている場合もあります。適量を心がけましょう。

2. 定期的な検査
甲状腺機能を簡易的に調べるには血液検査でTSH、T3、T4を測定します。
疲労感や体重増減が続く人は早めに受診を。

3. ストレス管理と十分な睡眠
ストレスはホルモンバランス全体に影響を及ぼす大きな要因。
コルチゾールと甲状腺ホルモンの連動にも注意が必要です。

4. 健康的な食生活
タンパク質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取し、極端なダイエットや偏った食事を避けることが大切。

日常で気をつけたいサイン
– 「以前は元気だったのに、最近やたら疲れやすい」
– 「ダイエットしていないのに体重が増えてきた(または減ってきた)」
– 「暑い・寒いの感じ方が周囲とズレている」
– 「気分が落ち込みやすい、もしくはイライラが多くなった」

このような症状がある場合、甲状腺ホルモンの乱れを疑ってみてもいいかもしれません。

まとめ

グループEにまとめた甲状腺ホルモンは、代謝や体温、そしてメンタル面まで広く影響を及ぼす重要な物質です。
疲労感や体重増減、気温に対する感覚のズレなど、じわじわと現れる不調は甲状腺機能の異常が関係している可能性があります。
症状が続くなら早めの検査が安心ですし、食事やストレスコントロールも効果的なケアになります。

次回はいよいよ最終回、第8回「総合的なライフスタイルアドバイスとまとめ」です。
これまで学んできたホルモン・神経伝達物質を相互に理解し、毎日の生活でどのように活かしていくか、実践的なヒントを総ざらいします。

ぜひお楽しみに!