第2回グループA- 心を落ち着かせる&リズムを整えるホルモン

皆さん、こんにちは。
前回は本連載の全体像やホルモン・神経伝達物質の基礎をお話ししました。
今回からは各グループについて、より具体的に掘り下げていきたいと思います。

第2回のテーマは「グループA – 心を落ち着かせる&リズムを整えるホルモン」。

ここでは主に以下の3つを紹介します。
1. セロトニン(Serotonin)
2. トリプトファン(Tryptophan)
3. メラトニン(Melatonin)

これらは「落ち着き」と「睡眠リズム」の鍵を握る物質として知られています。

1. セロトニン:心の安定を司る神経伝達物質

特徴と役割
– セロトニンは脳内で働く神経伝達物質の一種で、「幸せホルモン」と俗に呼ばれることもあります。
– 主な効果としては、精神的安定、イライラや不安の抑制、気持ちを落ち着かせるなどが挙げられます。
– 不足すると落ち込みやすくなり、うつ症状の一因になることも指摘されています。

増やす方法
1. 朝の日光を浴びる
セロトニン神経は朝の光刺激によって活性化しやすいです。10〜15分でも屋外の光を浴びる習慣を持つと、体内リズムが整いやすくなります。

2. リズミカルな運動
ウォーキング、ジョギング、スイミングなど、一定のリズムで体を動かす運動がセロトニン分泌を促すといわれています。

3. 食事からのサポート
セロトニン合成にはトリプトファンなどの必須アミノ酸、さらにビタミンB6などが必要です。
肉や魚、大豆製品、乳製品、ナッツ類、バナナなどをバランスよく摂取しましょう。

2. トリプトファン:セロトニンやメラトニンの原料となる必須アミノ酸

特徴と役割
– トリプトファンは体内で合成できない「必須アミノ酸」の一種。
– このトリプトファンが、脳内でセロトニンに変換され、夜にはメラトニンへとさらに変化していくため、「落ち着き」と「睡眠」を支える出発点のような存在です。

多く含む食品
– 大豆製品(豆腐、納豆、みそなど)
– 乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)
– 肉類(特に鶏肉)や魚
– ナッツ・種子類(アーモンド、ヒマワリの種など)

効果的な摂取方法
1. 朝食を抜かない
トリプトファンは一度に大量に摂るより、1日の食事で小まめに摂取したほうが安定的に利用されます。
特に朝に摂ることで日中のセロトニン合成をサポートします。

2. ビタミンB6との組み合わせ
トリプトファンからセロトニン、メラトニンを作る過程ではビタミンB6やマグネシウムが関わります。
野菜・果物・玄米などを組み合わせて摂ることが望ましいです。

3. 運動後や就寝前にホッとする飲み物
トリプトファンは就寝前に摂るのも一つ。
ホットミルクや豆乳などを少量飲むと、リラックスモードに入りやすくなります。

3. メラトニン:睡眠リズムを司るホルモン

特徴と役割
– メラトニンは脳の松果体から分泌されるホルモンで、「体内時計」を調整し、自然な眠りを誘導します。
– 夜になると分泌が高まり、朝になると減少するリズムが理想。
これにより人は「夜に寝て、朝に起きる」生活リズムを形成します。

メラトニンの分泌を妨げる要因
1. 強い光(特にブルーライト)
スマートフォンやパソコンの画面から発せられるブルーライトは、メラトニンの分泌を抑制するといわれています。
寝る前は画面の明るさを落とす、読書などに切り替えるなどの工夫を。

2. 不規則な就寝時間
深夜まで起きていたり、毎日寝る時間がバラバラだと体内時計が乱れ、メラトニンの正常なリズムが崩れます。

3. カフェインやアルコールの過剰摂取
コーヒーやエナジードリンクなどに含まれるカフェイン、また晩酌のアルコールもメラトニンの正常な分泌を邪魔する可能性があります。

メラトニンを増やす生活習慣
– 早めの就寝と一定の起床時刻
毎日同じ時間に寝起きするだけでも体内時計が整いやすくなります。
週末の寝坊が過ぎると、月曜の朝がつらくなる「社会的時差ボケ」につながります。

– 夕方以降の照明をやや暗めに
間接照明や暖色系の照明を使う、スマホは夜モードに設定するなどして、夜は明るさを抑えましょう。

– リラックスタイムを確保
寝る前のストレッチ、アロマや音楽などで副交感神経を優位に。
ストレスを抱えたままだとメラトニン分泌も低下しやすくなります。

グループAが乱れるときに起こりやすい不調

1. 不安感やイライラ
セロトニン不足で感情のコントロールが難しくなる。

2. 睡眠障害(入眠障害や中途覚醒など)
メラトニン分泌が乱れて夜の眠りが浅くなる。

3. 慢性的な疲労感
夜の睡眠の質が悪いと、朝に起きても体がだるく、日中もモチベーションが上がらない。

セルフケアのポイントまとめ

1. 朝の光を味方につける
セロトニンを活性化させて、体内時計をリセット。

2. 食事バランスの見直し
トリプトファンやビタミンB群を意識的に摂る。

3. 就寝前のデジタルデトックス
スマホをいじる時間を減らし、メラトニンをしっかり分泌させる。

おわりに

グループA(セロトニン、トリプトファン、メラトニン)は、私たちの心身の土台となる「落ち着き」と「睡眠リズム」の要です。
現代はスマホやネット、夜型のライフスタイルなど、これらの物質を乱す要因が多い時代とも言えます。

まずは朝の光を浴び、食事や就寝前の時間に注意するだけでも、かなりの改善が期待できるはずです。

次回の第3回では「グループB – やる気や報酬系、ストレス関連のホルモン」と題して、ドーパミン・アドレナリン・エンドルフィンなど、より“攻め”の物質を取り上げます。

「やる気が出ない」「すぐに落ち込む」「報酬がないと動けない」といった方には必見の内容です。
ぜひお楽しみに!